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地球上に存在している植物は、およそ25万種。そのうち約1万5,000種が、サボテンやアロエなどの多肉植物の仲間です。多肉植物とは厚みのある葉や茎に多量の水分や養分を蓄えられる植物で、その原産地は北緯50度から南緯50度まで広く世界中に分布しています。
一般的にサボテンというと、「暑く乾燥した砂漠に生きる植物」というイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。もちろん砂漠地帯が原産のサボテンもたくさんありますが、それだけではありません。熱帯のジメジメとした雨期を生き抜くサボテンの仲間もあります。また、ある種のサボテンは寒冷地である高原地帯でたくましく育っています。
暑かったり寒かったり、あるいは乾燥していたり湿潤だったりといった過酷な自然環境に対し、サボテンなどの多肉植物はしぶとく柔軟に対応してきました。その結果、多様な種類が存在するようになったのです。したたかでしなやかで、とても適応能力に長けた植物。つまり、進化の最先端にいると言っても過言ではない植物がサボテンなのです。
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| サボテン少年から専門店店主へ |
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エスカルゴの殻を鉢代わりに |
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クロス型の壁掛けボックスに寄せ植えしたもの |
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(写真上)グラフティング・サボテンの数々
(写真下)カクタス・クロック |
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淡い緑色の葉が花のように重なっている「セダム」 |
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僕とサボテンとの付き合いは、小学校5年生の時にさかのぼります。生まれ育った群馬県の実家の庭で遊んでいた、ある日のこと。ふと軒下に目をやると、小さなサボテンが転がっていました。バラの栽培などを嗜(たしな)んでいた父がどこかで購入したものか、あるいは誰かにもらったものなのか、そのサボテンの出自は分かりません。ただ、僕はその薄暗い軒下に転がっているサボテンが、とてもかわいそうに思えたのです。そこで軒下から引っ張りだし、日当たりのいい場所に置いてあげました。そして、サボテンに関する知識はないなりに、定期的に水をあげるなどして世話をするようになりました。
すると、軒下から救出して数カ月後、そのサボテンが花を咲かせたのです。それ以前の僕は、サボテンに限らず植物全般に興味を持っていませんでした。でも、その花を見た瞬間、サボテンをとてもいとおしく感じたのです。それからはサボテンに関する本を読んで勉強したり、自分なりに栽培法を工夫したりするようになりました。また、小遣いをやりくりしてほかの種類のサボテンを買い求め、少しずつコレクションを増やしていったのです。
その後、僕は大学進学を機に上京。大学卒業後はCMディレクターになりました。サボテンたちは実家に置いたままで、「月に1回、水をあげるだけでいいから」と母に世話を頼んでいました。僕がサボテンと触れ合うのは、盆暮れに帰省したときだけです。それでも、水をあげる以外に特別なことをしていないにもかかわらず生きのびているサボテンを目にすると、日ごろの疲れがときほぐされるような心地よい気分を味わっていました。そんなサボテンとの遠距離恋愛のような関係は20年以上続きました。
やがて50歳を目前に控え、僕は多忙なCMディレクターの職を辞し、自分のペースでのんびり仕事をしたいと考えるようになりました。そして、小さな温室(コンサバトリー)みたいな店を作り、雑貨屋をはじめることにしたのです。その店では海外から輸入した雑貨を取り扱っていて、あくまでも店の飾りとしてサボテンを数鉢置きました。すると、なぜか雑貨よりもサボテンがよく売れたのです。いつしか店のメーン商品はサボテンになり、店はさながらサボテン専門店のようになりました。
僕はサボテンの魅力に目覚めた小学生のころでさえ、サボテン関連の仕事をしたいとは思いませんでした。そんな職業が成立するとは思えなかったからです。でも、サボテンに出合ってから40年を経て、期せずして僕はサボテン専門店の店主になっていたのです。
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| 多種多彩だからこそできる楽しみ方 |
思いもよらずサボテン専門店の店主となった僕ですが、やる以上は一人でも多くの人にサボテンの魅力を知ってほしいと考えるようになりました。そこで僕が行ったのが、サボテンをインテリアやオブジェとして楽しむための新しいスタイルの提案です。
例えば、素焼きの鉢でもサボテンの良さを十分楽しめますが、その鉢を別のものに変えてみる。タマゴの殻や貝殻、マグカップやゼリーを作るためのカップでもいいし、盆栽用の和風の鉢でもかまいません。サボテンのフォルムや色味を考慮して、植え替える器の素材や柄などを選んで組み合わせると、それまで以上にサボテンの魅力がアップしますし、ときには想像以上に面白い結果が生まれることもあります。
あるいは、壁掛けボックスにサボテンを寄せ植えして部屋の壁に飾り付けたり、種類の異なるサボテン同士をグラフティング(接ぎ木)してオリジナルのサボテンを生み出したりといったこともしました。僕が今までに手掛けたものには、タフなサボテンの特性を生かし、時計のムーブメントをはめ込んだ「カクタス・クロック」などもあります。
こんなふうにインテリアやオブジェとして多彩な楽しみ方ができるのも、個々に多様なフォルムを持つサボテンだからこそ可能なこと。サボテンなどの多肉植物には丸いのもあれば四角いのもあるし、背が高いのもあれば平べったいのもある。花びらのように葉が重なっている多肉植物もあるし、石ころなどにミミクリー(擬態)をしている種類もあるのです。また、トゲが全くないツルツルのサボテンがある一方、捕食者のゾウガメが跋扈(ばっこ)するガラパゴス諸島には身を守るためにトゲをびっしり生やしたサボテンが存在しています。
多種多彩ということでは、色に関しても同様です。一般的にサボテンの色というと、緑色を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。事実、サボテンの仲間の多くが緑色をしています。でも、その緑色にも濃淡がありますし、種類によっては赤やピンク、黄色いサボテンも存在します。それどころか世界で一番黒い植物も、反対に世界で一番白い植物も、実はサボテンの仲間なのです。
そうしたバラエティー豊かなフォルムや色をそのまま楽しむこともできるし、もとのサボテンの個性を生かしながら気ままにアレンジすることもできる。僕にとってサボテンは、気軽に付き合うことができ、常に僕の遊び心を刺激してくれる存在でもあるのです。
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| サボテンと良好な関係を築くためには |
サボテンは水をあげなくても勝手に育つ、と思っている人が多いのではないでしょうか。実際、サボテンの種類や鉢の大きさなどにもよりますが、2週間から1カ月に1度水をあげていれば、まず枯れることはありません。ただ、もっとサボテンと親密に付き合うというか、花を咲かせたり大きく生長させたりするためには、多少、水やりの時期に気を配る必要があります。
サボテンには生長期と休眠期というサイクルがあります。そして、大まかに分けると温暖な環境で育つ夏型のサボテンと、涼しい環境に適した冬型のサボテンがあり、それぞれ生長と休眠のサイクルが異なるのです。夏型は暑い季節に、冬型は寒い時期に水をあげることですくすくと育ちます。逆に夏型は冬期、冬型は夏期に水やりを控えたり断水したりする必要があります。
といっても、それほど難しく考える必要はありません。もちろん、よほど長期にわたって水をあげないか、逆に頻繁に水をあげすぎてしまえば、サボテンはダメになってしまいます。でも、2週間から1カ月に1度、ふと思いついたときにでも水をあげていれば、元気でいてくれます。環境への適応力が高く、我慢強いサボテンのこと。特に栄養剤などを与えなくても、ほんの少しの思いやりがあれば、末永くサボテンと幸せな関係を築けるでしょう。
また、サボテンをさまざまにアレンジしてインテリアとして楽しむためには、種類によって異なる特性や個性をしっかり把握しておく必要があります。下手なことをしてサボテンを枯らしてしまっては、元も子もありませんから。でも、鉢や器を変えるくらいのことは誰にでも簡単にできるので、ぜひ気軽に楽しんでみてください。
例えば、小さな子どもやペットのいる家庭であれば、トゲのないサボテンを選ぶといいでしょう。西日が強く差す部屋に住んでいて過去に植物を枯らした経験のある人には、乾燥地帯原産の日差しに強いサボテンをお勧めします。逆に日当たりの良くない部屋なら、耐陰性に優れたサボテンが最適です。月に1度水をあげるだけなので、忙しい人や面倒くさがりの人でもさほど差し障りないでしょう。どんな人でも、かなり変わった趣味嗜好(しこう)の人でさえも、きっと気に入るサボテンが見つかると思います。なにしろサボテンは、およそ1万5,000種もあるのですから。(談)
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はがねなおゆき■1948年、群馬県生まれ。大学卒業後、CMディレクターを経て、カクタスクリエーターに。サボテンの生産・販売はもとより、健康診断なども行う専門店「サボテン相談室」を東京・銀座ほかにて展開中。詳しくは下記ホームページを。
http://homepage.mac.com/sabotensoudanshitsu/ |