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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第1回] 「おざなり」だったり、「なおざり」だったりする言葉たち
ことばの問題

Q.「やおら立ち上がる」という言葉の正しい意味は、次のどちらでしょうか?

A 「ゆっくりと立ち上がる」
B 「突然、立ち上がる」

※答えはこのページの下に掲載しています。

 言葉は常に変化していますから、一概に正しい、正しくないと断定することはできません。ただ、言葉を専門にしているわたしには、「こだわり」をはじめ、「とりつくヒマもない」や「舌づつみを打つ」などといった言葉は、やはり「耳ざわり」に感じます。そうした言葉の誤用や言い回しの間違いなどについて考えていきたいと思います。

 言葉のカタチがよく似ている「おざなり」と「なおざり」。この二つの言葉を正確に使い分けている人はどれほどいるでしょうか。「おろそかにする」という意味で、「対策をおざなりにする」「おざなりな健康管理」などと「おざなり」が使われることがあります。でも、これは誤用です。

 「おざなり」を辞書で引くと、「お座なり」という表記が出ています。つまり「おざなり」はお座敷に関係した言葉で、「その場の間に合わせ」といった意味で江戸時代から使われはじめました。一方の「なおざり」は、語源は明確でありませんが、歴史的仮名遣いでは「なほざり」となります。「なほ(直)ではないこと」を表しており、平安時代にはすでに使われていました。

 整理すると、「おざなり」は「(いい加減ではあっても)一応は物事を行う」のに対し、「なおざり」は「軽視して放っておく」という意味です。ですから、「おろそかにする」という意味で使うのであれば、「対策をなおざりにする」「なおざりな健康管理」となるのです。

 この「おざなり」と「なおざり」は、言葉のカタチや響きが似ていることから、混同する人が多いのではないでしょうか。でも、言葉の成り立ちも意味もまったく別の語です。「おざなり」や「なおざり」に限らず、言葉を使う際は、いい加減になんとなくではなく、辞書を引くなどして正確を期すことを心掛けてください。

 なお、冒頭に挙げた「とりつくヒマもない」もなんとなく通じそうですが、正しくは「とりつく島もない」。「舌づつみ」も「舌で鼓を打つ」わけですから「舌つづみ」が正解です。「耳ざわり」に関しては、「耳触りのいい音楽」といった表記を見かけることもありますが、これは誤り。本来的には「耳障り」と記し、聞いて不快に感じるという意味にのみ使われる言葉なのです。(談)
ことばの問題

A.正解は、Aの「ゆっくりと立ち上がる」。

【解説】「やおら」を「不意に」「突然に」という意味でとらえている人が増えているようです。でも、「やおら」は「動作などがゆっくりである様子」「おもむろに」といった意味なのです。
 「やおら」などの副詞は抽象性の高い言葉です。「走る」や「リンゴ」といった言葉はすぐにイメージできますが、「やおら」がどのような状態かはイメージしづらいのでしょう。しかし、言葉を誤用せず、正しい意味を覚えてほしいと思います。


きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長。多くの辞典の編纂に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。

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