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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第4回] 「すごくおいしい」のか、「すごいおいしい」のか?
ことばの問題
Q
.次の例文のうち、正しいのはどちらでしょうか?
A 「彼女はすごく美人だ」
B 「彼女はすごい美人だ」
※答えはこのページの下に掲載しています。
わたしは言葉を専門としていますが、日ごろから若者言葉などに耳を傾け、常に言葉の乱れに注意を払っているかというと、そんなことはありません。ただ、先日テレビでフィギュアスケートの浅田真央選手が「すごいうれしい!」と言っているのを見たときには、「すごく」気になりました。
形容詞を連用修飾に用いる場合には、語尾の「い」を「く」に活用させるのが基本です。ですから、「すごいうれしい」ではなく、「すごくうれしい」が本来的には正しい。ただし、「形容詞の連用形だから」などと意識しながら話をする人はまれでしょう。それに、「すごい」は、「とても」などの副詞と同様に、「すごい」という形の副詞だと思い込んでいる人もいるようです。「とてもおいしい」、あるいは「超おいしい」と言うのと同じ感覚で、「すごいおいしい」と言っているのでしょう。
形容詞の語尾である「い」を「く」に変化させずに副詞的に使う用法が、まったくないわけではありません。関西の方言には「えらいきつい性格やな」という言い方がありますし、「恐ろしいたくさん書いたね」のような言い方は明治のころからありました。ただ、「すごく」優秀なフィギュアスケート選手が「すごいうれしい!」などと言うのは、いかがなものかと思った次第です。
同じく「い」の音が気になる最近の言葉に、「すいません」があります。動詞には、「き」「ぎ」「し」「り」の子音が脱落して「い」の音になる「イ音便」という現象があります(「ござります」→「ございます」など)。ただし、「すみません」の「み」が「イ音便」になることはありませんし、類例もありません。「すみません」の元の形である「すむ」と音や活用の似た「読む」や「噛(か)む」の場合を考えても、「すいません」がおかしいことが分かります。「読いません」や「噛いません」などとは、けっして言いませんから。
けれども、「すいません」に関しては、若者に限らず幅広い層で使われているようです。それも、ついうっかりというレベルではなく、間違いではないと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。少なくともわたしに謝罪する際には、正しく「すみません」と言っていただきたいと、切にお願いしたく存じます。(談)
ことばの問題
A.
正解は、AとB(どちらも間違いではありません)。
【解説】まず、謝罪します。意地悪な問題で、すみません。どちらも正しいのです。
これは「美人だ」をどうとらえるのかという問題です。ひとかたまりの形容動詞としてとらえれば、「すごく」でなければなりません。それに対して、「美人」が名詞で、それに「だ」という助動詞が付いたととらえた場合には、「すごい」になるのです。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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