>>瓦版トップ >>167号トップ >>特集 泉の森のためにできること


 大和駅から徒歩約25分、相模大塚駅からは徒歩約15分ほどの場所にある「泉の森」。約42haもの面積を擁する広大な森には、神奈川県指定の天然記念物である「シラカシ林」をはじめ、今なお豊かな自然が残されている。この森の保全や管理をはじめとしたさまざまな活動の拠点となっているのが、「自然観察センター・しらかしのいえ」(以下、「しらかしのいえ」)。この「しらかしのいえ」は大和市と(財)大和市スポーツ・よか・みどり財団、そして「しらかしのいえボランティア協議会」によって運営されている。その活動内容や彼らだからこそ知り得る泉の森の魅力について話を伺った。

写真・資料提供、取材協力/
財団法人大和市スポーツ・よか・みどり財団 自然観察センター
ゼロから始めた「森の面倒を見る仕事」
「くぬぎの森」の萌芽更新の様子。根株から新しい芽が順調に生育している
〈しらかしのいえボランティア協議会会長・清水道夫さん〉

 「しらかしのいえ」がオープンし、ボランティア協議会が発足したのが、平成9年です。ボランティア協議会は、それ以前から泉の森で活動していた自然観察団体や個人のボランティアの方、そして地元の自治会の方々などが中心になって立ち上げられました。わたし自身はもともと「日本野鳥の会」の会員で、その仲間が協議会の設立にかかわっていた関係から誘われ、このボランティアに参加したんです。発足時の協議会のボランティア登録者数は70人余りでしたが、現在は140人ほどが登録。それぞれ活動のジャンルごとに5つの部会と3つのグループに分かれて活動しています(下図参照)。

 ボランティア協議会の発足当初は、泉の森の地図もなければ系統立った資料やデータもない状態でした。イベントを企画しようにも、どこから手を付けていいのか分からない。本当にゼロからのスタートでした。「しらかしのいえ」の職員の方やボランティア協議会のメンバーと協力し合いながら、地道に資料作りや泉の森の整備などを進めてきたんです。

〈環境管理部会・梅月久夫さん〉
 わたしはもともと、清掃活動や地元の子どもたちを招いて自然観察会などを行う「泉の森愛護会」のメンバーでした。その会は、大和市の呼び掛けで始まり、地元の自治会が母体となっていたものです。それで、11年前にこのボランティア協議会が発足し、そのまま移行するような形で参加することになりました。

 ボランティア活動を始めた当初の泉の森は未整備なところも多く、気軽に散策できるような状態ではありませんでした。そこで、みんなで協力しながら、間伐材などの自然のものを使って柵を作るなど散策路を整えてきました。また、少しずつですが、森林整備なども進めています。

 種類にもよりますが、樹木は放っておくと枯れたり、あるいは風などの影響で倒れてしまったりします。だから、森林はある程度、世話をする必要があるんです。5年ほど前から「くぬぎの森」では、萌芽(ほうが)更新を行っています。萌芽更新とは、伐採後に残った根株から新しい芽を育て、樹木の再生を図る方法です。われわれ環境管理部会が伐採などの作業を、植物調査がデータの記録などを行っていますが、この五年でかなり満足のいく結果が出ています。また、伐採したクヌギは薪炭(しんたん)にしたり、シイタケ栽培のほだ木にしたりして活用しています。

 同じ泉の森の中でも、県指定の天然記念物である「シラカシ林」はしっかりと保全することが大切です。でも、そのほかの森林では、手付かずの自然のままだと森そのものが衰えていってしまうところもあります。だから、どこまで世話を焼けばいいのかをきちんと見極め、今以上に泉の森が魅力的になるように面倒を見るのが、われわれボランティアの仕事だと自負しています。

●しらかしのいえボランティア協議会の構成部会・グループ
泉の森ガイド部会 泉の森の四季折々の植物や昆虫などを観察し、毎月テーマを決めて散策する「泉の森観察会」を毎月第2日曜日に実施。
自然あんない部会 子どもを対象にした「自然とあそぼう」を毎月第3日曜日に開催。自然と親しむ観察会や工作などを行っています。
野鳥部会 初心者を対象に野鳥の見分け方や双眼鏡の使い方などをレクチャーする「バードウオッチング入門」を毎月第4日曜日に開催。
環境管理部会 下草刈りやハナショウブの花殻摘み、間伐材を利用した柵の維持補修など、泉の森の保全管理全般を担当。
柳と遊ぼう引地川部会 泉の森に隣接する「ふれあいの森・ふれあい広場」にある引地川の自然護岸の保全管理や清掃、魚類調査などを担当。
植物調査 主に「植物相調査」「花暦調査」「植生調査」という、泉の森の植物に関する3つの調査を行っています。
ホタル環境復元実行委員会 泉の森がホタルの生息に適した環境になるよう整備し、市民が気軽にホタルと親しめる場にするための活動を実施中。
事務局 ボランティア登録されている方を対象にした会報を隔月で発行。各部会間の連絡調整や会議の準備なども行っています。
取材協力/大原茂さん(事務局)、小島建吾さん(事務局)ほか各部会の方々
興味の尽きない泉の森での活動
子ども向けの「自然とあそぼう」(写真上)と、一般向けの「自然観察会」(写真下)の様子
〈しらかしのいえボランティア協議会会長・清水道夫さん〉

 ボランティア協議会のスタート当初は苦労もありましたが、気が付いたら10年以上経(た)っていたという印象です。ボランティア協議会の第一義は、当然、泉の森を訪れる方々に楽しんでもらうこと。でも、ボランティアのメンバーも楽しみながら活動しているんです。わたし自身に関して言えば野鳥が好きで、野鳥が数多く生息している泉の森には訪れるたびに何かしら新しい発見がある。だから、10年以上経っても飽きずにボランティア活動を続けていられるのだと思います。

〈泉の森ガイド部会・山口美恵子さん〉
 わたしは子どものころから泉の森のすぐ近くに住んでいて、ボランティア協議会の発足直後に募集告知を目にして応募しました。昔から植物などに興味はありましたが、特に詳しい知識があったわけではありません。それで、少しでも勉強できればと思って応募したんです。「泉の森ガイド部会」にも昆虫や野草に詳しい人がいますし、「野鳥部会」などほかの部会にはそれこそ知識の豊富な方がたくさんいます。だから、このボランティアに参加して、本当に多くのことを得ることができました。

 わたしたち「泉の森ガイド部会」では毎月、自然観察会を行っていますが、スタート当初は不慣れな部分も多かったですし、思うようにいかないこともたくさんありました。それをほかの部会の方々にも協力してもらいながら、「どうしたら参加者に楽しんでもらえるか」と試行錯誤を重ねてきました。そして、現在は季節ごとにテーマを決めて月に1回、自然観察会を開催しています。このスタイルが確立したのは5年ほど前からですね。

 わたしは数年前まで仕事が忙しくて月に1、2回しかボランティアに参加できない時期がありました。そうしたこともあって、10年以上も泉の森にかかわっているとはいっても、この森に対する新鮮さがまったく薄れていないんです。季節によってさまざまな表情を見せてくれるし、わたしの知らない泉の森の魅力はまだまだたくさんあると思っています。ですから、もっと泉の森のことを知りたいし、同時にわたしがこれまでに泉の森で感じた楽しさや驚きをより多くの人に伝えていきたいですね。

初心者も専門家も楽しめる森の生態
 泉の森の最大の魅力が、多種多彩な野鳥と植物だ。それぞれの見どころについて、各担当部会の方は次のように語る。

〈野鳥部会・上野宗弘さん〉
 よく言われることですが、泉の森の一番の特徴は、市街地の中に貴重な自然がたくさん残されているということです。野鳥に関しても、市街地にありながら数十種類もの鳥をごく間近で観察できます。こういった場所は、ほかにあまり例がないのではないでしょうか。

 まず、観察が容易なのが、「しらかしの池」や「自然観察センター」前の小川などに生息しているカモです。カモは比較的、動きが少ないですから、小さな子どもたちでも手軽に観察できますし、写真を撮るにも最適だと思います。ちなみに11年前の時点では、泉の森に生息しているカモは2、3種でしたが、現在は7、8種に増えているんです。増えた要因はいろいろ考えられますが、訪れる方々のモラルの問題も大きいと思います。特に「しらかしの池」の周辺などは多くの人が訪れていますが、皆さん、むやみにエサをやらないなど、節度を持って鳥たちと接している。だから、カモにとっても居心地のいい場所になっているのだと思います。

 また、バードウオッチングの初心者にはカワセミもお勧めです。泉の森にはカワセミの巣が2カ所あって、毎年繁殖していることが確認されています。カワセミはほぼ年間を通じて観察できますし、”清流を飛ぶ宝石の鳥“と形容されるほどの美しい鳥です。泉の森ではバードウオッチングのリピーターが多いのですが、中でもカワセミは人気が高いですね。

 基本的に野鳥は、自分の姿を隠しやすい木々が鬱蒼(うっそう)とした場所を好みます。野鳥にとっては安全ですし、そうした場所にはエサとなる虫もたくさんいますから。泉の森でいうと、国道246号線の北側に緑の濃い森が広がっています。泉の森を訪れる人の多くは、「しらかしの池」周辺で足を止めがちです。そこでも十分に楽しめますが、ぜひ一度、北側の森にも足を運んでみてください。バードウオッチング用の観察デッキなども設けていますし、注意深く歩くと、貴重な野鳥の姿を目にすることができると思います。

〈植物調査・本田実さん〉
 わたしはボランティアとして参加して3年ほどですが、今に至るもそれほど植物に詳しいわけではありません。ただ、そんな初心者のようなわたしでも、散策路を2、3時間かけて歩くと、スギやクヌギ、シラカシなどの木々や、季節ごとの草花を目にして楽しむことができます。また、泉の森全体では約600種もの植物が確認されていますが、中には神奈川県内でもここでしか見られないような希少な草花も何種類かあります。ですから、初心者は初心者なりに、詳しい人は詳しい人なりに植物を楽しめるというのが、泉の森の面白さだと思います。

 興味はあるけれど植物にそれほど詳しくないという方は、自然観察会などに参加するか、図鑑を持って散策するとより楽しめると思います。「しらかしのいえ」にも植物や野鳥、昆虫の情報を掲示しているので、先にセンターに立ち寄ってから散策するのもいいですね。また、「しらかしのいえ」の職員の方やわれわれボランティアが森を巡回しているので、ぜひ気軽に声を掛けてください。分かる範囲ですが、場所ごとの見どころなどをお教えします。

泉の森を愛する人の輪を広げるために
活動の拠点となっている「自然観察センター・しらかしのいえ」
〈しらかしのいえボランティア協議会会長・清水道夫さん〉

 われわれボランティア協議会のモットーは「無理なく自分のできることから」です。ボランティアに応募してくる人も、野鳥や野草に通暁している人からまったくの初心者までさまざま。ボランティア向けの会報の編集を担当している「事務局」に、「パソコンを覚えたいから」と応募してきた人もいました。また、大和駅には相鉄線と小田急線が走っていることから、大和市外からも多くの方が泉の森を訪れますが、ボランティアのメンバーも同様です。わたし自身、瀬谷から4、50分かけて通っていますし、中には川崎の方から1時間半ほどかけて通っている方もいます。泉の森とその自然に興味や愛着を持っている人であれば、誰でも参加できるんです。

 昨年、発足から10周年という節目を迎えましたが、われわれボランティア協議会はまだ発展段階で、試行錯誤を続けている部分もたくさんあります。野鳥や植物の知識に限らず、多くのことを学びながらボランティアとして成長していく。同時に学んだことや得たことを泉の森を訪れた方々に還元していく。そうしたことを続けながら、泉の森のことを大切に思う人が少しでも増え、「しらかしのいえ」の職員の方とともにボランティア協議会も発展していけたらと考えています。

「しらかしのいえボランティア協議会」では、随時メンバーを募集しています。詳しくは、直接お問い合わせいただくか、下記ホームページを参照してください。

●自然観察センター・しらかしのいえ
 TEL.046(264)6633
 http://www.yamato-zaidan.or.jp/institution/ync/




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