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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第7回] 「ありえな〜い」という、その言葉遣いこそ「ありえない」!?
ことばの問題
Q
.次の例文のうち、正しいのはどちらでしょうか?
A 「それはありえることだ」
B 「それはありうることだ」
※答えはこのページの下に掲載しています。
最近、テレビやインターネットなどでよく目や耳にする言葉に「ありえない」があります。「ありえない」とは「あることができない」「存在する可能性がない」という意味です。ですから、グルメ番組などでレポーターが今まさに口にしている料理に対して「このハンバーグ、ありえない!」などと発言している姿を見かけ、首をかしげる人も多いのではないでしょうか。
例えば「宇宙人なんて、ありえない」と言った場合、この「ありえない」には「信じられない」や「ナンセンス」といった意味合いも含まれます。事実として容認しがたいことや許しがたいことに対して「ありえない」を使用するのは、「ありえる」ことで、間違いではありません。「あってほしくない」という意味で「抜き打ちテストなんて、ありえない」と言ったり、「ウソ?」「マジで?」などと同様の意味合いで「ありえない」と言うのは、いずれもそうした打ち消しの意味を持たせて使用しているのでしょう。
では、先のレポーターの言葉はどうでしょうか。「このハンバーグは、信じられないほどおいしい」という意味合いで「ありえない」を使っています。このように、対象に対して賞賛や同意の気持ちを込めて「ありえない」を用いることに、「ありえない」と違和感を持つ人が多いのでしょう。
ただ、若者言葉の肩を持つわけではありませんが、これは「ああ」や「おお」といった感動詞と同じように、「ありえない」を使っているのです。良い意味でも悪い意味でも「スゴイ」や「ヤバイ」を使うのと同様、感情の総合的表現として、つまり感動詞のように、「ありえない」が重用されているのだと思います。「ありえない」に限らず、昨今は言葉の使い方がだんだんエスカレートしていく傾向が見受けられます。感情や状況を表現しようにも適切な言葉が見あたらず、結果的に程度の強い言葉を大げさに使ってしまうのでしょう。
言葉の誤用を防ぎ、語彙(ごい)を増やすには、やはり読書が一番です。それも、ただストーリーの上辺をなぞるのではなく、知らない言葉に出合ったら辞書にあたるなどして、一語一語を咀嚼(そしゃく)するようにして読む。そうすれば、感想を聞かれた際も、「この本、ありえない」などと口にせずに済むようになるのではないでしょうか。(談)
ことばの問題
A.
AとB(どちらも間違いではありません)。
【解説】意地悪な問題で、すみません。ただ、漢字にすると「える」も「うる」も「得る」なので、比較的、簡単な問題だったかもしれません。
「ありえる」は口語形、「ありうる」は文語形です。口語の「ありえる」は下一段活用で、連体形は「ありえる」。一方、文語の「ありう」は下二段活用で、連体形は「ありうる」になります。それぞれの打ち消しの連体形は、「ありえない(こと)」「ありえぬ(こと)」になります。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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