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ある部分で歌舞伎を超えた? |
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撮影協力/三吉演芸場
横浜市南区万世町2-37 TEL.045(231)7633 |
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私(わたし)、大衆演劇の味方です。思わずそう叫びたくなるほど、大衆演劇の話題になると熱くなってしまいます。
そもそも大衆演劇を知ったのは5歳頃(ころ)かな(ということは、45年前)。当時、神社でお祭りがあると必ず芝居があったんですね。もちろん、タダです。で、盆踊りと盆踊りの合間に小芝居がある。演目はいまと同じように必ず時代劇でしたね。
たいてい国定忠治、番場忠太郎をはじめとした股旅ものなんですけど、この義理人情に厚いヒーローの生き様がなんともいえずカッコイイ。勧善懲悪ですからね、主役はカッコイイはずですよ。でも、話の筋もシンプルで喜怒哀楽もはっきり描かれてますから、5歳の私でも理解できた。そして、最後は泣かせる芝居で掛け値無しに心打たれるわけです。
すっかり魅せられた私は、刀を買ってもらって妹とさきほどの芝居の続きを家族に見せて悦に入ってました。
私のオヤジの時代は、大衆演劇はもっと盛んで全国に700を超える劇団があったそうです。「サッチー・ミッチー事件」の浅香光代さん率いる女剣劇も盛んでしたね。
残念ながら、檜(ひのき)舞台の歌舞伎に対して、地方から地方への旅巡業。「ドサ回り」と軽く見られていたと思います。いまでも、ドサにかわりありません。300もの劇団が全国の芝居小屋や健康ランド、ヘルスセンターなどに長期間(半月〜2カ月)公演して回っています。
さてさて、あれから半世紀。いまの大衆演劇はガラリと様変わりしています。「歌舞伎を超えた?」と思える部分も少なくありません。
梅沢富美男さん、松井誠さん…といったテレビや檜舞台で活躍する2大スターも輩出しています。
そういえば、しばらく忘れていた大衆演劇を思い出させてくれたのも梅沢さんでした。1982年、TBSで名作『淋しいのはお前だけじゃない』(脚本・市川森一さん)というドラマを放送したんです。やくざに追い込まれた元サラ金屋が、生き延びるために旅一座を結成して借金を返済していくという筋です。楽しみなのは毎回、ドラマの筋が大衆演劇に関連していること。「一本刀土俵入り」「雪乃丞変化(ゆきのじょうへんげ)」「名月赤城山」などが演じられる。つまり、劇中劇という構成なのです(これはTBSでヒットしたドラマ「タイガー&ドラゴン」やNHKの「ちりとてちん」でも参考にしたドラマ手法ですね)。
さて、最近では、座長の低年齢化が著しく、お客さんも若い女性が急増しています。20代の座長なんて当たり前になってきました。超若手では、紅白歌合戦に出場した早乙女太一さん(少年?)という役者は引っ張りだこの人気です。
演目はそうたいして変わってません。あいも変わらず、お涙頂戴(ちょうだい)の股旅もの中心。でも、演出がものすごく進化してきたんです。
音声や照明といった舞台装置が進化する以上に、芝居や唄、踊りには宝塚もビックリ、ジャニーズ顔負けのダンスや衣裳(いしょう)など、年々、舞台は華やかになっているのです。はじめて見た人は、大衆演劇というよりも、「歌舞伎+宝塚+ジャニーズ+吉本興業÷4」のステージと錯覚すると思います。こうなると、もうドサとは呼ばせません。
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| 大衆演劇の魅力はここにある! |
大衆演劇ってどこでやってるの? チケットはお茶屋さんで買うの? だれでも入れてくれるの?…たしかに、はじめての方はちょっと不安ですよね。
さて、どこでやってるか? いまならネットで調べればすぐにわかります。熱心な劇団になると座長みずからホームページやブログで宣伝してますし、ファンによる私設ホームページも少なくありません。
私の贔屓(ひいき)は「都若丸劇団」「劇団KAZUMA」です。座長大会でたくさんの座長、劇団を知りましたけど、この二つの芝居が好きですね。とくに若丸座長は京本政樹を超えてる色男。若丸座長の女形を見た女性陣はため息をつくばかり。その気持ち、わかるなぁ。劇団KAZUMAの藤美一馬座長は芸達者。この人、芝居がホントに巧(うま)い。鯔背(いなせ)で歩く姿が絵になるのよね。けど、本領発揮は喜劇です。あれ、藤山寛美? 大村崑(こん)? なるほど、聞けば、昔、寛美師匠の舞台で修行経験があるとか。道理で芸の中にも彷彿(ほうふつ)とさせる瞬間がありますね。
大衆演劇の醍醐味(だいごみ)は、贔屓の座長や劇団を見つけることにもあります。
ですから、「追っかけ」も少なくありませんよ。いつも通っている三吉演芸場(横浜市南区・横浜橋商店街)では、夜行バスで大阪から駆け付け、昼間の芝居を見るや、「わて、これから浅草やねん。今日はダブルヘッダーやねん。ここからバス出てる? 出てへん。なら、タクシーで行くわ」と元気元気。関西弁で声援を贈る姿はとても60代には見えませんでしたね。
追っかけができるのも商業演劇に比べて、リーズナブルな料金だからでしょう。映画と同額かそれより少し高い程度ですね。ただし、健康ランド等では入場料に含まれているケースもありますから、その点は主催者に確認してくださいね。
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| これだけわかれば、あなたも大衆演劇通? |
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都若丸さん[写真提供/都若丸劇団] |
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藤美一馬さん[写真提供/劇団KAZUMA] |
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そのほか、大衆演劇の特徴を少しご紹介しておきましょう。
1.座長・・・主役は座長です。観客は全員、座長ファンと言ってもいいでしょう。大衆演劇は家族経営で座長中心で回っています。
2.構成・・・芝居(おもに時代劇)+舞踊ショー+歌謡ショーの3部構成が普通です。3時間、フルに愉(たの)しめますよ。
3.日変わり・・・大衆演劇の底力だと思いますが、1カ月、毎日違う芝居を見せてくれます。歌やショーだけでなく、衣裳まで毎日違います。こんなにネタがあるのは凄い。毎日観る追っかけがいるはずだ。
4.時代劇版ミュージカル・・・大衆演劇は、まず、芝居です。そして、華やかな衣裳をまとった踊りに注目。きらびやかな照明と音楽。扇子や番傘を小道具にみごとな踊りを披露してくれます。
5.花・・・ひいきの役者へのご祝儀のことです。舞台で現金を渡す大衆演劇独特の風習ですね。ただし、芝居の時はNG。踊りや歌謡ショーがチャンスです。ある意味、花は役者の人気バロメーターでもありますから、彼らも愉しみにしています。金額が少なければ祝儀袋で、1,000円札を何十枚もつなげてレイのようにして首に掛けてあげると見栄えもいいです。もちろん、これが1万円のレイも少なくありません。
もちろん、みながみな花を渡しているわけではありません。ほとんどのお客さんは役者が粋に花をもらうシーンを静かに愉しんでいます。
6.掛け声・・・むやみやたらに掛ければいいというものではありません。役者のほうでも、「ここで掛けてもらいたい」というタイミングがやっぱりあるのです。こればかりは劇場に通って覚えるしかありませんね。
7.写真撮影・・・最近はどこでもデジカメで撮る人が少なくありませんが、花と同じように芝居の最中はNGです。というのも、役者もお客さんも集中しているのです。邪魔しちゃ野暮(やぼ)というもの。これも踊りと、歌謡ショーがチャンスです。
8.送り出し・・・公演が終了した後、「ありがとうございました!」と座員総出でお客さんを見送ります。この時、贔屓の役者がいれば記念撮影もOKです。劇団にとってファンは神さまです。お客さんと役者が身近に触れ合える大衆演劇ならではの慣例です。
9.口上・・・落語のマクラが楽しみなのと同様、実はこの幕間(まくあい)の挨拶(あいさつ)が大好きなんです。なぜなら、各劇団とも大いに笑わせてくれるからです。座長のユーモア度によってウケたりウケなかったり。やっぱり人気劇団の座長ほどバカウケしてますね。お客さんへの満員御礼(満員でなくても前日は満員御礼だったと言う)と翌日の外題(げだい)予告、公演情報やグッズ販売の宣伝などを行います。
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大衆演劇のユニークさは文章化されたシナリオではなく、話の筋に基づいて口立(くちだて)で台詞(せりふ)合わせをして芝居を作っていく点にあります。子供の頃から一座にいたある大物座長はこれが嫌でわざわざ脚本を用意してましたけど、逆に、「蒲田行進曲」「熱海殺人事件」で知られる劇団主宰者のつかこうへいさんは口立で芝居を作っています。
瞬間瞬間の閃(ひらめ)きで融通無碍(むげ)に芝居を作るなんて、なんかジャズのジャムセッションみたいでカッコイイじゃないですか。
私、やっぱり大衆演劇の味方です。
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なかじまたかし■東京都生まれ。早大政経学部、南カルフォルニア大学大学院修了。PHP研究所、東洋経済新報社を経て独立。経営コンサルタント、経済評論家、ジャーナリスト、作家 (ペンネームは別) 、出版・映画プロデューサー、大学・ビジネススクール講師、テレビコメンテーター等々、多彩な顔を持つ。「笑わせる!技術」(廣済堂)ほか著書・訳書多数。
ビジネス情報満載のブログは、http://www.keymannet.co.jp/
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