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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第8回] 「おビールのほうをお持ちしました」に潜む数々の「?」
ことばの問題
Q
.次の例文のうち、「〜のほう」の使い方が正しいのはどちらでしょうか?
A 「お体のほうはいかがですか」
B 「お釣りのほうは320円です」
※答えはこのページの下に掲載しています。
標題の「おビールのほうをお持ちしました」は飲食店などで耳にする言い回しですが、気になるところが3つあります。
まず、「ビール」に「お」を付けるのは、言葉を美しく上品にしようとしてのことでしょう。こういう語を「美化語」と言います。本来、日本語の原則として外来語やカタカナ語に「お」や「ご」は付けないのですが、おそらく美しく上品な表現にしようとして、「おビール」という言い方が生まれたのでしょう。美化語は上品な物言いによって自分の品位を高める表現ですが、使い過ぎると、かえって相手に悪い印象を与えますので留意が必要です。
次に、「〜のほう」が問題です。これは、2つ以上の事柄を対比・比較する際に、「(Aより)Bのほうが好き」などと使うのが正しい使い方です。また、言いたいことをぼかしたり遠回しにしたりするときに使うこともあります。ただ、標題のようないわゆる接客用語などでは、比較対象がなく、ぼかす必要がない場合でも、「〜のほう」を使っているようです。最近、若者を中心に多用されている「〜とか」などもそうですが、聞き手に真意がきちんと伝わらないこともありますので、「〜のほう」などのぼかし表現を乱用するのは避けたほうが賢明でしょう。
そして、3つ目が「お持ちする」です。終戦のころまでは「お〜する」は正しくない表現とされていたようです。確かに「持つ」は自分の行為で、それに「お」を付けて尊敬にするのはおかしいのです。ところが現在では、「(目上の人を)お誘いする」などは謙譲を表す言い方として一般化していますし、「お休みします」のように行為の及ぶ相手がなく謙譲表現にならない言葉(自動詞)にまで使われるようになりました。時代とともに「お〜する」は一般的になっていますが、まだ年輩の人には抵抗を感じる人も少なくないようです。
こうしてみると「おビールのほうをお持ちしました」は、上品に、遠回しに、謙譲の意を込めてと、手厚くコーティングされていることが分かります。ただし、丁寧な言葉や言い回しは、過剰になると顰蹙(ひんしゅく)を招きかねません。「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、言葉に限らず何事もほどほどが肝心だということでしょう。(談)
ことばの問題
A.
正解はAの「お体のほうはいかがですか」。
【解説】本文でも触れたように、Bは不必要なぼかし表現といえるでしょう。「〜のほう」は本来、Aのように用います。
これは、相手の健康状態や仕事などを気遣ってのこと。「役所のほうに勤めています」などと、自分の職業をぼかす目的で使うこともあります。「〜のほう」だけでなく「〜くらい」や「〜ほど」などもそうですが、こうした言い方はハッキリ言わないといいますか、極めて日本的な言い回しです。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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