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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第12回] 「ご苦労さま」と「お疲れさま」、似て非なる言葉の使用法とは?
ことばの問題
Q
.次のうち、正しいのはどちらでしょうか?
A 「どうぞ、お召し上がりください」
B 「どうか、お召し上がりください」
※答えはこのページの下に掲載しています。
共に似たような場面で発せられる「ご苦労さま」と「お疲れさま」。この二つの言葉の使い分けに関してはさまざまな意見があります。ただ、部下や年下の者から「ご苦労さまです」と声を掛けられて、違和感を覚える上役の人や年長者も少なからずいるのではないでしょうか。
もともと「ご苦労さま」は、相手の苦労や骨折りをねぎらうために用いる言葉です。苦労を掛けた立場の人から苦労を掛けられた立場の人に向けられる言葉ですから、目上の人が目下の人に使う言葉としてふさわしいといえるでしょう。これに対し、目下の人が目上の人の苦労をねぎらうのであれば、「お疲れさま」のほうが自然であるとされています。、そもそも「お疲れさま」は、(たとえ自分とは関係なくても)疲れていると思われる相手の労をねぎらう言葉です。そう考えると、目下の人が目上の人を気遣うのであれば、「お疲れさまです」の方が妥当でしょう。
ただ、「お疲れさま」は、本来の意味を離れた日常的なあいさつ言葉として広まっており、それほど相手が疲れていなくても使う場合が見受けられます。現在は特にその傾向が著しく、目上・目下の別などを気にする人は少なくなっているのかもしれません。また、最近ではメールの文頭に「お世話さまです」ではなく、「お疲れさまです」と記す人も少なくないようです。
わたしがあるテレビ局に出向いた際に、年若いプロデューサーから「お疲れさまです」と迎え入れられたことがありました。これから彼の指示に従って仕事をし、その結果として疲れるかもしれませんが、まだ疲れていないわたしに「お疲れさま」とはどういうことなのか。首を傾(かし)げざるを得ませんでした。そのプロデューサーの言葉を好意的に解釈すれば、テレビ局に足を運んだことに対する「お疲れさま」だったのかもしれません。しかし、そうではなかったようですが……。
ともかく、あいさつ言葉化しているとはいえ、むやみに「お疲れさま」を使うと、あいさつとしても不適切になりかねません。少なくとも目上の人に対しては、適切に丁重に「お疲れさまでした」と労をねぎらうべきでしょう。不適切な言葉は時にかえって相手を疲れさせますから。(談)
ことばの問題
A.
正解は、Aの「どうぞ、お召し上がりください」。
【解説】正解といいますか、人にモノを勧める言葉としては、Aがふさわしいということです。
そもそも「どうぞ」には、事態の実現を相手に任せる気持ちが強く表されます。それに対し「どうか」は、自分が願う気持ちのほうが強く、ともすると相手に強要する含みを持ちます。つまり、時と場合によりますが、「どうか」を用いて依頼や懇願などをした場合、相手に押しつけがましい印象を与える可能性があるのです。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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