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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第14回] 「休みをいただいております」って、あげた覚えはありません
ことばの問題
Q
.次のうち、正しいのはどちらでしょうか?
A 「歌わせていただきます」
B 「歌わさせていただきます」
※答えはこのページの下に掲載しています。
仕事相手などに電話をし、目当ての人が休暇中だったときに、「○×は、お休みをいただいております」と言われて、すんなりと受話器を置くのをためらうような思いを味わった人は少なくないでしょう。
その原因は、「いただく」にあります。「いただく」は「もらう」の謙譲語で、本来は恩恵を与えてくれた相手に対して感謝の気持ち表すために用いるものです。こちらが休みを与えたのなら話は別ですが、そうではないのに「休みをいただいて〜」と言われて違和感を抱くのは当然でしょう。しかも、誰に休みをもらったのかといえば、会社あるいは上司からです。身内である会社や上司を持ち上げるかのように「いただいて」と言うのはおかしなわけで、「休みをいただいて〜」は謙譲語の使い方として誤りであることが明白です。
と、ここまで「休みをいただいて〜」を一方的に非難してきましたが、この言葉はどのような論理のもとに生まれ、使われるようになったのでしょうか。本来であれば、「休みを取っております」で十分なはずです。ただ、それだとやや丁重さに欠けるように感じられて心もとないことから、「休みをいただいて〜」という言い方がされるようになったのでしょう。つまり、謙譲語としてではなく、言葉遣いを上品にする美化語と同じような感覚で「いただく」を用いているのです。
先日、テレビ番組で若い女優さんが料理を口にしている場面で、アナウンサーが傍らから、「Aさんがいただいています」と解説していました。これも「食べている」では品が悪く感じられ、かといって「召し上がっている」では尊敬しすぎることになるということから、本来の用法からするとおかしな「いただいています」が使われたのでしょう。そのように論理立てて考えているかどうかはともかく、こうした美化語的なニュアンスで「いただく」が用いられるケースが増えているようです。
「休みをいただいて〜」という言い方がされるようになったのにも理由はあり、「いただく」の美化語的な使い方はこれからも増えていくと思われます。ただ、本来の使い方からすれば、誤りです。「休みをいただいて〜」に戸惑いを感じる人が少なからずいることも、胸に留め置いてください。(談)
ことばの問題
A.
正解は、Aの「歌わせていただきます」。
【解説】以前にも取り上げましたが、Bのような言い方を「さ入れ言葉」と言います。使役を表す助動詞には「せる」と「させる」がありますが、「歌う」のような五段動詞(「ない」を付けたときに語尾がア段音になる動詞)には「せる」がつきます。
「さ入れ言葉」が生まれた背景には、使役の意味合いを強めようとする気持ちがあるのでしょう。明確な間違いですが、「いただく」の美化語化に通じる心理が働いているのかもしれません。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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