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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第16回] 「以上をもちまして」とは、何を「持つ」のでしょうか?
ことばの問題
Q
.次のうち、正しいのはどちらでしょうか?
A 「以心伝心」
B 「意心伝心」
※答えはこのページの下に掲載しています。
特にあらたまった場所などで、「以上をもちまして、閉会の言葉とさせていただきます」といった言葉を耳にすることがあります。ただ、結論から先に述べると、この「をもちまして」は明らかな誤りです。
「をもって」は「を」と「もって」からなり、このように二つ以上の単語が連結し、一つの単語と同様の働きをする語を「連語」といいます。「をもって」の場合、助詞の「で」と同じような働きをするので(「以上をもって」=「以上で」)、「助詞相当連語」などとも呼ばれます。このほかにも、「について」(=「を」)、「によって」(=「で」)、「において」(=「で」)、などが助詞相当連語の仲間です。こうした連語として分けがたく結び付き、いわば慣用固定化したものには、本来「ます」のような敬語表現が入ることはありません。つまり、「その問題につきまして」や「先生によりまして」、「横浜におきまして」などといった言い回しは、いずれも誤りなのです。
話を「をもって」に戻すと、語源は「を持ちて」ですが、現在では「を以て」と表記します。語源の「持って」という動詞の働きは完全に失われており、標題の「何を持つのか?」という質問に答えれば、別に何かを「持つ」わけではありません。中には「を持ちまして」などという表記を見掛けることもありますが、これでは二重に誤りになります。
また、明らかな誤用ではありませんが、「ます」の連用形を過剰に付ける例が増えています。「会社に行き、社長にお会いし、お礼を申し上げました」と言えば済むところを、「会社に行きまして、社長にお会いしまして、お礼を申し上げました」などと言う。丁寧な物言いを心掛けているつもりかもしれませんが、くどくどしい印象を与えかねません。
自分自身の言葉遣いに自信がないことの反動などもあって、「まして」を誤用、多用するような敬語の過剰表現が生まれているのでしょう。ただ、丁寧も度を超えるとバカ丁寧となり、かえって尊敬の度合いを弱めたり、本意を伝わりにくくしたりすることにつながりかねません。文末の「です」「ます」は不可欠ですが、文中のものは削除する方が、表現がかえって引き締まります。程度をわきまえることが肝要です。以上をもって、わたしの見解とさせていただきます。(談)
ことばの問題
A.
正解は、Aの「以心伝心」。
【解説】これは言葉本来の意味を考えれば、簡単だったのではないでしょうか。「以心伝心」はもともと禅宗の言葉ですが、一般には「言葉や文字を使わなくても、お互いの気持ちが通じ合う」という意味です。つまり「心を以て心を伝う」ですから、「以心」が正解です。
本文でも触れましたが、このように「以て」は「それによって」や「それで」などを意味し、接続詞や助詞と同様の働きをします。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長などを歴任。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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