>>瓦版トップ
>>178号トップ
>>こだわりの日本語
「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第17回] 「二個上の先輩」って、なんでも「個」で片付けていませんか?
ことばの問題
Q
.「三カ所」の漢字表記で次のうち、正しいのはどちらでしょうか?
A 「三個所」
B 「三箇所」
※答えはこのページの下に掲載しています。
突然ですが、お米やごはんはどのように数えるでしょうか。「一粒」とも言えば、茶碗(ちゃわん)によそった状態を「一杯」とも数えますし、精米所などでは「一升」や「一俵」といった言い方が飛び交うでしょう。この「一」を数詞、「粒」や「杯」、「升」や「俵」を助数詞といいます。
助数詞は対象となる数えるもの、あるいはその性質や形状などによって使い分けます。ニンジンやダイコンは単体では「一本」ですが、山盛りになっていれば「一山」や「一盛り」。ハガキは「一葉」ですが、ポストに投函(とうかん)すると「一通」となります。こうした助数詞の使い分けは日本語に限らず、英語や中国語でも行われています。
では、表題にある年齢や学年の数え方はどうでしょう。年齢は「一歳」、学年は「一年」と数えるのが基本で、「二歳上」や「二年上」といった言い方は全く問題ありません。また、「二つ上」という言い回しがありますが、これも正しい言い方です。「つ」は古事記や万葉集の時代から使われている助数詞で、年齢も含めてさまざまな対象に用いることができます。ただし、「つ」が付くのは「一(ひと)」から「九(ここの)」までの数詞だけで、「十」以上には使えません。
「つ」と同様に幅広い対象に使うことができる助数詞が、「個」です。ミカンや消しゴムなどは、「つ」でも「個」でも数えることができます。ただ、「個」は形あるものや固形のものに使うのが本来的な用法です。中国では人間も「個」で数えることがありますが、日本語で年齢や学年を「個」で数えるのは正しいとは言えません。「二個上の先輩」ではなく、「二歳上」や「二年上」、「二つ上」と言った方が適切です。
最近は、何にでも「つ」や「個」で数える傾向が強まっているように見受けられます。また、多様な助数詞を覚えるのは大変だし、「つ」や「個」で済ませた方が効率的だと考える人がいるかもしれません。しかし、助数詞を使い分けるということは、自分が生きている世界とどう接し、認識するかということにも通じる問題です。そこまで大げさに考えずとも、年齢や学年などを「個」で数えるのは避けた方が賢明でしょう。いくら「自分の方が二個上だ」などと胸を張ったところで、人として下に見られかねませんから。(談)
ことばの問題
A.
正解は、AとB(どちらも間違いではありません)。
【解説】意地悪な問題で、失礼いたしました。
「箇所」の方が一般的かもしれませんが、「個所」も間違いではありません。特定の部分や場所を数える際に用いる助数詞の「箇所」や「個所」は、「か所」はじめ、「カ所」や「ケ所」とも記します。
ちなみに、カタカナの「ケ」は漢字の「介」が語源です。ただし、「ケ所」に関しては、「箇」の略字
※
が変化したものです。
※「箇」の略字=「
」
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長などを歴任。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
>>このページのトップへ<<
前のページへ
次のページへ
SAGAMI RAILWAY Co.,Ltd. Copyright 2009 All rights reserved.