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約四・六ヘクタールの敷地に広がる「ヒルサイドエリア Y150つながりの森」(以下、つながりの森)。ここでは、公募で集まった市民スタッフがさまざまなテーマのもと、企画・運営する出展などが行われる。
「つながりの森」とはどのような場所なのか。
会場ディレクターの柗井(まつい)氏と市民スタッフの方に話を伺った。
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| 「毎日刻々と表情を変える会場の雰囲気を楽しんでください」 |
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「ヒルサイドエリア」会場ディレクター 柗井正澄さん |
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建築中の「竹の海原」をバックに |
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「つながりの森」は人と人をはじめ、人と自然、人と環境、人と地球など、さまざまな「つながり」を感じ取ることのできる場所を目指し、会場づくりを進めてきました。そうした「つながり」の一つが、この会場全体で二万本ほど使われている竹です。
会場で使用する竹は、昨年十月から十二月にかけて市内の公園などで伐採したものです。伐採には約七百人の市民ボランティアの方々にも参加していただきました。横浜市内は、開港からの百五十年でおよそ三〇パーセントまで緑比率*が減少したといわれています。また、横浜に限らず全国的に放置された竹林が増えており、里山の荒廃などに対する危惧(きぐ)が高まっています。今回、市内で竹を伐採し、それを会場で建築材として使用することで竹の需要が増加すると地産地消のシステムが構築できるし、身近な自然環境や里山の保全に思いを巡らせる機会になればと考えているのです。
*植木などの緑が占める面積の割合
こうした竹を使用した「つながりの森」のシンボルが、「竹の海原」です。ここは市民スタッフによるプロジェクトやプログラムが連日三十前後展開される、「つながりの森」のメーンステージ。竹を使った建築施設としては日本最大級で、約九千本の竹を使用しています。ノンコンクリート、ノンエアコンのパビリオンで、環境負荷の少ない多様な工法や技術を導入しているのも特徴です。屋根は波をイメージして約五千本の竹を組み合わせていますが、その竹の下には日射量をセーブする特殊な光触媒テントを張り巡らせています。竹とテントを通して適度に太陽光が差し込むので、電気の使用を抑えることも可能です。また、建物の周囲には高さ三メートルの竹のスクリーンを張り巡らせ、内部を風が通り抜けるように工夫しました。通路の屋根の一部にもテントを張らずに風や雨が建物内に入り込むようにし、半屋外の空間にしています。さらに、噴水のある池や、主な出入り口と東面の竹スクリーンには霧が出る装置を設けているので、暑い盛りの会期中も涼やかに過ごせるのではないでしょうか。
環境への負荷が少ないということでは、会場の屋外階段の舗装などに使ったウッドチップも同様です。このウッドチップは、市内の街路樹や公園内の樹木を剪定(せんてい)した際に出た枝を活用しました。また、会期後に不要になる竹もリサイクルを考えています。竹から繊維を抽出し、リサイクルペーパーとして活用する予定です。「竹の海原」の床には杉の間伐材が使われていますが、これも会期後はプランターボックスとして再利用します。 |
| ベイサイドエリアとヒルサイドエリアをつなぐ里山の「海原」 |
この「つながりの森」の場所は、もともとズーラシアの第二駐車場だったところ。高低差五メートルのひな壇状になっていて、敷地内の東側には小高い丘がありました。そうした本来の地形を生かし、「竹の海原」を中心に「風の広場」「丘の広場」「みはらし広場」「いこい広場」などを配しています。その中でも特に足を運んでいただきたいのが、「みはらし広場」。ここから「竹の海原」を眺めると、高低差の関係で壁面が隠れて波状の屋根だけを望むことができます。そもそもベイサイドエリアとヒルサイドエリアをつなぐ存在として考案したのが、森の中に海を再現した「竹の海原」です。「みはらし広場」からは、その海原の景観を堪能できると思います。ちなみに、「みはらし広場」を訪れるなら、午前十時前後がお勧めです。天気のよい日には、「竹の海原」の屋根越しに富士山を望むことができます。
会場内には、市民スタッフのプロジェクトの一環でもある棚田や段々畑、花と野菜の共生関係を活用した「コンパニオンプランツ」という花壇なども造りました。各所に設ける竹のフェンスも朝顔やヘチマといったツル性の植物で覆いますし、会場全体で六十種以上の草花を植える予定です。
日本古来の里山には豊かな自然があり、四季折々で多彩な表情を見せてくれました。「つながりの森」も里山と同じく、棚田や段々畑、草花などがさまざまな彩りを会場に添えてくれると思います。例えば「竹の海原」の屋根に使われている竹も、濃い緑から徐々に淡く変化していくでしょう。加えて、この「つながりの森」では市民スタッフによる百八十以上のプロジェクトが展開され、毎日多くの催しが行われます。会期中は、一日として同じ雰囲気の日はないといっても過言ではありません。ぜひ一度といわず二度三度と足を運んでいただきたい。まずは存分に楽しみ、その結果として人と人とのつながりや自然の大切さといった「つながりの森」のメッセージを感じ取っていただけたら、わたしとしてもディレクター冥利(みょうり)につきます。(談) |
| まついまさすみ■一九五四年、滋賀県生まれ。建築家、アトリエトド主宰。数々の建築作品のほか、和泉川などのランドスケープデザインも手掛ける。二〇〇五年「愛・地球博」(愛知万博)では、市民パビリオン・海上(かいしょ)広場のファシリテーター・アドバイザーを務めた。 |
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| ヒルサイドエリアを舞台に展開されるのが、市民スタッフ自らが立ち上げた「市民創発」プロジェクト。二〇〇七年十月から十二月に募集が行われ、三百人を超える応募者が集まりました。市民創発の各メンバーは閉校になった校舎(旧若葉台西中学校)でのワークショップなどを経て、それぞれのプロジェクトを準備。会期中には百八十以上のプロジェクト(活動)が発表されます。そこで、二組の市民創発メンバーに参加の経緯やプロジェクトの見どころなどを伺いました。 |
| 「一緒に盛り上がる仲間として来場者を迎えたいですね」 |
| 福前明日香さん 原田紘旭(ひろあき)さん |
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若葉台にある畑でメンバーと
(写真左奥が福前さん、その右隣が原田さん) |
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「農コン〜農と私(わたし)がもっと近づくプロジェクト」を展開する福前さんと原田さん。八月四日から一週間「農カフェ&バー」を出展するほか、会期中を通じてヒルサイド会場に畑を設け、野菜作りを行います。
福前さん わたしたちは単純に「ヒルサイドを盛り上げたい!」ということから参加しました。そしてメンバー同士で話し合いを重ねる中で、横浜、特にヒルサイド的な横浜について知ることができるもの、地域に還元できるもの、「開国博Y150」が終わったあとも続けられるものを、自分たちのプロジェクトにしたいと考えたんです。そこから「農」というテーマになりました。
原田さん プロジェクト名の「農コン」は「農×コンパ(懇親会)」の略。「農」をカジュアルに楽しむキッカケ作りの場になればと考えています。
福前さん ただ、メンバーは全員、「農」のシロウトです。そこで、テーマが決まってから、詳しい方をお招きしたり本を購読したりする勉強会を開いています。それと去年の夏以降は、市民創発プロジェクトのベースになっている学校の近くに畑を借りて野菜作りも始めました。実際に野菜作りを体験してみて感じたのは、意外に育つということと、とにかく楽しいということ。本格的な農業になると別でしょうが、レジャー感覚で楽しむ週末菜園レベルでは、大変さよりも面白さを実感することの方が多かったです。
原田さん 大変だったことは、一度にたくさん小松菜ができてしまったことくらいでしょうか。
福前さん 今までに十五種類ほどの野菜を育てましたが、けっこう無計画だったり無鉄砲だったりしたことも多かったです。それでも、どの野菜もけなげに育ってくれました。「土に生かされている」ということを実感できたし、野菜作りを通して食の安全などにも思いを巡らせるようになりました。
原田さん メンバーはみんな仕事があるので、畑には週末しか行けません。当初、平日はほったらかしに近い状態だったのですが、同じ区画の方が面倒を見てくださったこともありました。迷惑や心配を掛けて申し訳ない気持ちもありますが、そういう人のつながりは畑という場所ならではだと思います。メンバーも初めは四人でしたが、今では十人に増えました。
福前さん ワークショップなどを通じて知り合った、ほかのプロジェクトの方々とのつながりも大きいですね。まだ企画段階ですが、本番ではほかのプロジェクトと一緒に何かやれたらと考えています。 |
| 「来場した農家の方に野菜作りのノウハウを教えてもらいたい」 |
原田さん 「農カフェ&バー」では、野菜を使ったワークショップや、クイズなどを考えています。例えば、横浜市内には三、〇〇〇ヘクタールを超える農地があって、バラエティー豊かな野菜が作られている。そうした情報を押しつけがましくなく、楽しく来場者に伝えられたらと思います。
福前さん 畑では体験型というか、実際に土に触れて野菜作りを楽しんでもらいます。来場者はお客さんというよりも参加者で、一緒にヒルサイド会場を盛り上げてくれる仲間として迎え入れたいと思っています。
原田さん 僕らの野菜作りはつたない面もたくさんあるので、来場した農家の方に怒られるかもしれません。でも、そうやって直接ご指導いただけるのを楽しみにしているというか、ぜひアドバイスしてほしいです。あと、スーパーなどに並ぶキレイな野菜しか知らない小さいお子さんも多いと思います。そうしたお子さんに、土に生える野菜の姿を知ってほしいです。
福前さん わたしたちはこのプロジェクトを通じて野菜作りの楽しさを知ったし、自分たちなりに「農」や食に関しても考えるようになりました。その自分たちが感じたり考えたりしたことをいかに来場者に伝えるか。「農」というと難しく考えられがちですし、実際に大変なこともなくはないけれど、まずは楽しさや面白さを伝えたいと思っています。そこで、一人でも「自分もやってみようかな」と思ってもらえたらうれしいですね。
原田さん 会期前からこんなことをいうのは不遜(ふそん)かもしれませんが、僕らにとって「開国博Y150」はスタートに過ぎません。今後も野菜作りを続けていくので、まずは「開国博Y150」で仲間を増やせたらと思っています。(談) |
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| 「地元の商店街の楽しさや魅力を多くの人に伝えたいですね」 |
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三宅久美子さん |
| 「横浜商店街応援プロジェクト」「オープン・キャンパスinつながりの森」「Takesugo(タケスゴ)2009〜外遊び編」という三つの企画を手掛ける三宅さん。それぞれの準備でお忙しい中、相鉄線ともゆかりのある商店街のプロジェクトを中心に話を伺いました。 |
わたしが自分の暮らす地域に意識を向けるようになったキッカケは子育てなのですが、その過程で今回プロジェクトで取り上げる商店街に目を向けることになりました。わたしは長らく相鉄線沿線に暮らしていますが、それまであまり地元を顧みることはありませんでした。雑誌のライターの仕事をしていて、多くの時間を東京で過ごしていたからです。それが子どもを産んで地域の方々と交流を深めるうち、これまでとは別の目線で地元を意識するようになりました。二年前からは二俣川のサンハート(横浜市旭区民文化センター)で区民企画委員を務めているのですが、ほかにも何か地域の役に立つことができないかと考えていたとき目にしたのが、今回の市民創発の募集告知。そこで、ワークショップに出向いて総合プロデューサーの小川巧記さんの話を伺ううち、ぜひこのイベントに参加したいと思ったのです。市民のスキルを生かしてイベントを盛り立てるという、市民創発の考え方にとても共感しました。
そこで、まず自分が手掛けるならばと考えたのが、商店街を応援するプロジェクトです。どこの家庭もそうだと思いますが、子どもが小学校に上がる前後、初めてのお使いに送り出すでしょう。でも、わたしにはなかなかできませんでした。個人商店であれば、お店の方と顔なじみにもなります。そうすれば、わが家の好みもおおよそ把握してくれているでしょうし、わが子を安心してお使いに送り出せます。ただし、わたしにはそうした行きつけの個人商店がありませんでした。時間が不規則な仕事をしていて、地元での買い物はほとんどスーパーで済ませていたからです。そんなことがあって以降、商店街は単にモノを売り買いする場ではなく、地域のコミュニケーションのベースになっているのではと思うようになったのです。今回のプロジェクトでは、そうした商店街の役割や魅力を多くの人に紹介したいと考えました。 |
| 「商店街で感じた楽しさや気持ちよさを、来場者にも伝えたい」 |
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三ツ境の商店街での取材先の方々
撮影/笠木靖之 |
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取り上げる商店街は鶴ケ峰や二俣川、希望ケ丘や三ツ境など十カ所ほど。それぞれの商店街で、できれば三つの企画を展開したいと考えています。まず一つ目が、CM制作。商店街全体、あるいは一軒の商店にスポットを当て、十五秒から一分ほどのCMを作ります。全部で二、三十本のCMをヒルサイド会場で流すほか、インターネットでも見られるように準備を進めています。二つ目が、ローカルでマニアックなクイズの出題。例えば「××駅前の焼鳥屋さんではネギマは一本いくらでしょう?」といった肩の凝らないもので、正解すると何か得するようなもの。各商店街で百円程度の商品と交換可能というような遊び感覚を取り入れながら、商店街への興味をかき立てて、実際に足を運んでもらえればと考えています。
そして三つ目が、商店街の歴史や昔話を採録して紹介すること。おじいちゃんやおばあちゃんの思い出話は、本で得る知識などとは別の手触りやぬくもりがあるでしょう。わたしも取材を通して経験していますが、そういう話を聞くと、それまでとは街の見え方や印象ががらりと変わってきます。そうしたことを来場者にも伝えたいのです。
例えば、三ツ境駅の南口から商店街を通って二十分ほど歩くと、長屋門公園があります。その行き来に商店街を素通りするのではなく、ぜひ足を止めてほしいのです。行きにお弁当を買ってもいいし、帰りにおだんごやケーキを買うのでも構いません。しかも、買い物がてらお店の方と二言三言でも言葉を交わす。そうすると、ただ駅と公園とを行き来するよりも、格段に街が身近に感じられるようになると思います。なじみの街、二度三度と足を運びたくなるお店があると、地元への意識も少しずつ変わってくると思います。そのためにも商店街を気軽に有意義に活用してほしいと考えているのです。
わたし自身、今回のプロジェクトの取材を通して、さまざまな年代、いろいろな職業の方に話を伺っています。自然と「こんにちは」などとあいさつを交わす人も増えました。それがとても気持ちがいいし、こういう環境なら安心して子どもをお使いに送り出せます。一昔前なら当たり前だったのでしょうが、今は少なくなっているでしょう。だから、このプロジェクトを通して、商店街や地域を見直すキッカケになればと思っています。とはいえ、わたしのプロジェクトは、商店街の活性化うんぬんといった堅苦しい話ではありません。クスッと笑えるCMやトリビアルなクイズです。取りあえず、冷やかし半分で構わないのでぜひ足を運んでほしいですね。(談) |
三宅さんの出展情報(いずれも「竹の海原」に出展予定)
「横浜商店街応援プロジェクト」7/21〜8/3
http://genki-yokohama.blogspot.com/
「オープン・キャンパスinつながりの森」9/1〜14
「Takesugo(タケスゴ)2009〜外遊び編」7/21〜27 |