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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第19回] 「お休みなさい」に「お帰りなさい」、命令するアイサツたち
ことばの問題
Q
.次の例文のうち、
正しいのはどちらでしょうか?
A 「ようこそ、いらっしゃいませ」
B 「ようこそ、いらっしゃいました」
※答えはこのページの下に掲載しています。
普段、何気なく言い交わしているあいさつの言葉ですが、よくよく考えると妙なものが少なくありません。例えば「さようなら」は、「それならば」といった意味です。互いに「それならば」と言いながら手を振って別れる場面というのも、不可思議というか滑稽(こっけい)な光景でしょう。
そうしたあいさつの言葉で気になる点の一つに、なぜか命令形が多いということが挙げられます。例えば、標題にある「お休みなさい」。現代の人々にとって「〜なさい」という言い方は、命令や依頼の表現として強過ぎるし、生意気だと感じられます。「立ちなさい」ではなく「立ってください」、「持ちなさい」ではなく「持ってください」などと、「〜してください」を用いるべきだと考えるでしょう。しかし、少し時代をさかのぼると、「〜なさい」は敬語の命令形として不自然ではなく、十分に丁寧な表現でした。
ただ、そうだとしても、これから就寝する人がそうではない人に向けて「お休みなさい」と言うのは、不自然だと思われるかもしれません。これは、「わたしは休みますが、あなたも早くお休みください」といったいたわりの意味で用いられ始め、慣用化して「お休みなさい」になったものと推察されます。
また、同じ「〜なさい」のあいさつの仲間に、「お帰りなさい」があります。これは、おそらく「(ようこそ)お帰りなさい(ませ)」の( )の部分が省略されたものでしょう。つまり、帰ってきた相手に「帰ってこい」と言っているわけではなく、「よく帰ってきた」と評価しているわけです。
それに対し、「いらっしゃい」は命令のニュアンスが強い言葉で、「こっちへ来い」という呼び掛けから生まれたものでしょう。ただ、「お帰りなさい」同様、相手が「来た」ことを評価する意味合いも少なからず含まれています。
と、ここまであいさつの言葉について分析してきましたが、実はこうした詮索(せんさく)はあまり意味がありません。ある理由やきっかけで、あるいはいつの間にか、本来の意味を離れるなどして記号のように固定化したものが、あいさつの言葉だからです。意味を求めて理屈をこねるよりも、日々きちんとあいさつを交わすことの方がよほど肝要です。それでは、みなさん「それならば」。(談)
ことばの問題
A.
正解は、Bの「ようこそ、いらっしゃいました」。
【解説】「いらっしゃいませ」は「まだ来ていないから来い」といった意味合いの命令表現。これに対し、「ようこそ」は来たことに関して「よくまあ」と評価する表現です。つまり、来ていないのに「ようこそ」と評価することはできないので、Aは成り立たない表現となります。
ただし、あいさつの言葉に文法的な厳密さを求めるのはあまり意味がないので、Aの表現にそれほど目くじらを立てる必要はないのかもしれません。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長などを歴任。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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