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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第20回] 「もらう」のか「くれる」のか、「いただいてください」の怪
ことばの問題

Q.次のうち、正しいのは
どちらでしょうか?


A 「お客さまに来ていただき…」
B 「お客さまが来ていただき…」

※答えはこのページの下に掲載しています。

 パーティーなどで司会者から「帰りに受け付けで記念品をいただいてください」と言われることがあります。また、料理をよそわれて「熱いうちにいただいてください」と言われることもあるでしょう。こうした言い回しに接し、首を傾げたくなる人も少なくないかもしれません。二例に共通する「いただいてください」は、一筋縄ではいかない尊敬表現だからです。

 「いただいてください」のうち、「いただく」は「もらう」の謙譲語、「くださる」は「くれる」の尊敬語です。「いただく(もらう)」は自分が相手にしてもらうのであり、「くださる(くれる)」は相手が自分にしてくれるのです。つまり、「わたしが・いただく」であり「あなたが・くださる」ですから、行為の主体が逆、行為の方向が反対になります。

 では、二つが合わさった「いただいてください」はどうでしょう。冒頭の二例は、いずれも相手にお願いしているわけですから、「〜ください」の部分は適切ですが、「いただいて〜」を用いるのは不適切となります。それぞれ「〜記念品をお受け取りください」「(料理を)召し上がってください」などと言うべきです。
 以前にも何度か取り上げた、言葉遣いを上品にする美化語の問題があります。あるいは「いただいてください」も、美化語として使っているのかもしれません。また、時と場合によっては「いただいてください」を適切な表現として用いることもできます。ただ、謙譲と尊敬が合わさった複雑な表現ですし、「いただいてください」の使用に際しては留意が必要です。

 「ください」と「いただく」に関しては、「〜させていただきます」を取り上げた回で言及した問題もあります。「入ってください」は相手への丁寧なお願いですが、「入っていただきます」は表現は丁寧でも、こちらから相手への一方的な押し付けになります。

 わたしは日ごろから言葉の誤用などに関して、比較的、寛容な態度で接しているつもりです。ただし、こちらの頭を混乱させるような「いただいてください」に関しては、「使わないでください」というお願いではなく、「使わないでいただきます」と通告したい思いでいます。(談)

ことばの問題

A.正解は、Aの「お客さまに来ていただき…」。

【解説】本文でも触れたように、「いただく」の主体は自分、「くださる」の主体は相手です。つまり「わたしが・お客さまに来ていただき…」ですから、正解はAとなります。
 Bのような「…が来ていただき…」という表現を見聞きすることもなくはありません。ただし、これは明らかな誤りです。「お客さまが」と言う場合には、相手が行為の主体ですから、それに続くのは「来てくださり」となります。


きたはらやすお■筑波大学名誉教授(前学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長などを歴任。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。

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