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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第21回] 「怒り心頭に達する」や「恨み骨髄に達す」なんてできません
ことばの問題
Q
.次のうち、正しいのは
どちらでしょうか?
A 「感動して、鳥肌が立つ」
B 「恐ろしくて、鳥肌が立つ」
※答えはこのページの下に掲載しています。
言葉を誤るのにもそれなりの筋道、「誤用の論理」といったものがあります。誤用の論理をたどって気付くのは、言葉のイメージや語感に流されるなどして、なんとはなしに間違ってしまう例の多さです。そうしたケアレスミスが特に目立つのが、ことわざや慣用句(成句)です。
「激しく怒る」という意味の成句「怒り心頭に発する」。文化庁による平成17年度の調査結果
*
では、「〜発する」を使う人が一四パーセント、表題のような間違いの「〜達する」を使う人が約七四パーセントとなっています。これほど多くの人が誤る原因は、まず「心頭」にあるのではないでしょうか。
この「心頭」は、「心と頭」という意味ではありません。「街頭」や「店頭」、「喉頭(こうとう)」などと同じで、「頭」は「そのあたり」といった意味。そして「発する」は「外にあふれ出る」という意味です。つまり、「怒り心頭に発する」は「怒りが心のあたりにおいてあふれ出す」ことを言い表しています。
同じく怒りを表す言い回しに「頭に来る」があります。この表現のイメージから、「怒りが頭に来る(届く)」のだから「〜達する」がいいのでは、と思って誤用する人が増えているのかもしれません。しかし、「心頭」は頭ではありませんし、どこかで発生した怒りが心に到達するわけではないのです。
そして、「とても深い恨みを抱く」という意味の成句である「恨み骨髄に徹(てっ)す」。「徹す」とは「ゆきとおる」「しみとおる」といった意味で、全体では「恨みが骨の芯にまでしみとおる」となります。この「徹す」も、「達す」や「発す」と間違う人が多いようです。発音が似ていることから混同しているのかもしれません。また、「〜達す」は「恨みが骨の芯に到達する」、「〜発す」は「恨みが骨の芯から発生する」と解すこともでき、意味としては通じるように思われます。ただし、成句はひとかたまりで成り立っている言葉ですので、正しく「〜徹す」を用いてください。
成句には耳慣れない文語的表現も多く、間違えやすいのは事実です。とはいえ、説教や訓辞などの場面で誤って引用してしまうと、「馬脚を露す」ことになりかねません。とりあえず、「馬脚を露す」の意味や「露す」の読みが分からない方は、面倒がらずに辞書にあたってください。(談)
*平成17年度「国語に関する世論調査」(文化庁)より
ことばの問題
A.
正解は、Bの「恐ろしくて、鳥肌が立つ」。
【解説】「鳥肌が立つ」のは、本来、恐怖や寒さ、不安や不快感といったマイナスの要因によるもの。その結果、鳥の毛をむしったあとのように、ヒフの毛穴が収縮してブツブツが出る現象を指します。
ところが最近では、感動や喜びなどを表す際にも「鳥肌が立つ」が使われています。確かに、「鳥肌が立」ったようになりますが、スポーツ観戦や映画鑑賞などで感動して使うのは、本来的には誤りです。
きたはらやすお■筑波大学名誉教授(元学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長などを歴任。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。
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