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「細かな点にまで気を使って価値を追求すること」という意味合いで使われているこだわり。でも、本来は「ささいなことを必要以上に気にすること」という意味なのです。こうした昨今の言葉の変わりようなどについて、このページでは少しだけこだわって考察していきます。
[第24回] ムダに丁寧な言葉を「おっしゃられて」いませんか?
ことばの問題

Q.次のうち、正しいのはどちらでしょうか?

A 「その件は、存じております」
B 「その件は、存じ上げております」

※答えはこのページの下に掲載しています。

 総じて敬語は、使っているうちに「これでは敬意が低いのではないか」と心配になってくる言葉です。使い続けているうちにそれが当たり前になり、敬意が不足しているような気がしてくるのです。まして、尊敬語は相手を高め、謙譲語は自分がへりくだる言葉だなどと日ごろから意識して会話を交わしている人など多くはないでしょう。そうしたことから、より丁寧に言おうとして、あるいは「とりあえず、それらしく話しておけば」というぞんざいな気持ちが働いて、過剰な敬語表現が生まれてくるのです。

 そうした敬語の過剰使用の代表格が、敬語を二つ重ねて使う「二重敬語」です。「言う」「話す」の尊敬語「おっしゃる」、「見る」の尊敬語「ご覧になる」、「行く」「来る」の尊敬語「おいでになる」。これらに尊敬を表す助動詞「れる」を付け、「おっしゃられる」「ご覧になられる」「おいでになられる」などとするのは二重敬語であり、避けるべき表現です。尊敬の気持ちを強く示そうとしてこうした言い回しをするのでしょうが、過ぎたるは及ばざるがごとし。敬語に敬語を重ねても尊敬の度合いが倍加するわけではありません。 

 また、二重敬語と混同しやすいものに「敬語連続」があります。例えば「話している」のように、二つの動詞が接続助詞「て」を介して連続している場合。「て」の前後を敬語にして「お話しになっていらっしゃる」とするのが敬語連続ですが、この言い方は誤りではありません。ただし、これも時と場合、程度などを考慮する必要があり、二重敬語と同様、敬語が過剰で耳障りな印象を与えることもあります。ですから、いずれか一方、据わりの良さを考えると「て」の後ろの言葉だけを敬語にし、「話していらっしゃる」などとした方がスマートでしょう。

 敬語は相手を高めたり、あらたまった気持ちを示す表現ですが、それだけではありません。相手との距離を取る働きも備えています。適切な敬語を使って節度ある距離感を保っている分には問題ありませんが、度が過ぎるとよそよそしく素っ気ない話し方や態度だと受け取られかねません。お近づきになりたくない人を相手にするのなら話は別ですが、過剰な敬語表現のご使用はくれぐれもお控えになった方がよろしいかと存じます。(談)

ことばの問題

A.正解は、Aの「その件は、存じております」。

【解説】「知る」「思う」に謙譲語の「おる」を付けた「知って(思って)おります」でも、いちおうの敬語表現です。それをより丁寧に言う場合には「知る」「思う」を謙譲語の「存ずる」に変え、「存じております」を用います。これにさらに謙譲語の「上げる」を加え、「存じ上げております」とするのはやりすぎです。また、「存じ上げる」は「思う」という意味では使えず、「知る」の意味でも人以外には使用できないなど制約が多いので、留意が必要です。


きたはらやすお■筑波大学名誉教授(元学長)。独立行政法人日本学生支援機構理事長などを歴任。多くの辞典の編纂(へんさん)に携わっているほか、「問題な日本語」(大修館書店)などの編著書も多数。

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